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オンラインリポート 2

【「過ち」を認めない“無謬政党”との闘争の記録】

「北朝鮮本」裁判、“実質的勝訴”で決着!


日本共産党が訴えを「取り下げ」  未来書房らと和解成立
 日本共産党(本件代表・志位和夫)が拙著『拉致被害者と日本人妻を返せ〜北朝鮮問題と日本共産党の罪』(未来書房刊)をめぐって小生や版元に対し、名誉毀損および著作権侵害による損害賠償2200万円などを求めていた裁判で、2004年10月29日、原告の共産党は訴えを取り下げ、和解が成立した(和解条項はこの項末尾参照)。
 日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」はこれまで裁判報道に名を借りて、この本がデタラメであるかのように懸命に“宣伝”を重ねてきたが、和解条項では、そうした共産党側の主張はまったく盛り込まれなかった。いうなれば、この本で摘示された事実、つまり、日本共産党が北朝鮮帰国事業に政党として中心的にかかわりながら、北朝鮮在住の日本人妻らになんら積極的に救済の手を差し伸べようとしなかった無責任な態度のほか、日本人拉致の解明について尽力してきた元国会議員秘書・兵本達吉氏の調査を妨害したことなどを、事実上認める「和解内容」となっている。
 和解条項の第1項にある「表現の一部に誤解を招くおそれのある表現があった」の記述は、原告側が揚げ足とりとして指摘してきた「殺人加担行為といってもよい」などの論評部分であり、事実内容に関するものではまったくない。
 さらに第2項では、本件書籍の販売等をとりやめる等の記載があるが、これはあくまで本書巻末に「資料集」として過去の赤旗記事等を了解をえることなく掲載したことに対してなされたものであり、肝心の本文記述内容に誤りがあったなどということではまったくない。第1項でなく、第2項に入っていることからもそのことは明らかであろう。
 いずれにせよ、原告の日本共産党は、2200万円もの損害賠償などを求める訴えを起こしながらも、一銭の賠償金すら手にすることもなく、本書の記述内容(摘示事実)が誤りであるなどの自らの主張をその一部さえも著者に認めさせることもできず(ありえない話だが‥)、被告らの明確な謝罪の言葉もないままに、自ら上げた拳(こぶし)を降ろしてしまったことになる。その直接的な理由は、判決で名誉毀損が認められないことがすでに予想されていたので、これまで盛んに「デマ本」とのプロパガンダに努めてきた手前、裁判所によって本書で書かれていることが「すべて事実」と認定される事態を恐れたからにほかならない。
 私にとって重要なことは、本書で摘示した事実が誤りであったかどうか(要するにウソの事実を示したかどうか)だったが、その点、共産党はなんらの「成果」も得ることができなかった。私は最後まで突っ張って「名誉毀損とならない明確な判決をもらいたい」との立場だったが、被告が複数にわたっており、裁判所の勧告にしたがって共産党側が取り下げるのであれば、それもやむなしと考えた次第である。

【和解条項】
(前文)
 原告と被告株式会社未来書房、同海野安雄及び同稲山三夫こと柳原滋雄は、本件訴訟において、それぞれ以下のとおり主張した。

(原告の主張)
 別紙文献目録記載の各文献を資料集として巻末に掲載した別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という)は、北朝鮮帰国事業及び北朝鮮による拉致事件に関し、原告の社会的評価を著しく低下させ、もってその名誉を毀損するものであり、あわせて著作権を侵害するものである。

(被告らの主張)
 本件書籍におけて取り上げた北朝鮮帰国事業及び北朝鮮による拉致事件に関する記述は、歴史的事実を真摯に探求、調査した結果にも基づくものであり、公正な論評にあたるから本件書籍の記述は何ら原告の名誉を毀損するものではなく、かつ本件書籍は著作権を侵害するものではない。
 以上の双方の主張を踏まえ、紛争を解決すべきとの裁判所の勧告に基づき、原告及び被告らは、次のとおり和解する。

第1項 被告らは、本件書籍における北朝鮮帰国事業及び北朝鮮による拉致事件に関する表現の一部に誤解を招くおそれのある表現があったことにつき遺憾の意を表する。
第2項 被告らは、本件書籍の巻末に資料集として別紙文献目録記載の文献を原告の許諾なく使用したことに関して遺憾の意を表し、今後、本件書籍を印刷、製本、販売、又は頒布しない。
第3項 原告は、本件和解に基づいて、本件書籍に関して被告ら及び訴外岡謙二を被告訴人としてなした刑事告訴を速やかに取り消す。
第4項 原告は、被告らに対するその余の請求を放棄する。
第5項 原告らは、原告被告間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。
第6項 訴訟費用は各自の負担とする。

党最高責任者が「偽名」をなのる政党の“呆れた”機関紙
 2004年10月29日の「和解」について、翌日の日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」がどのように報じるか関心をもっていたが、私の予想していた1面掲載でもなく、社会面トップでもなく、4面という目立たない箇所に掲載されていた。「赤旗」にとっては、企画連載までした事案にもかかわらず、控えめな扱いである。やはり、大きく扱うのは恥ずかしかったのだろうか。
 翌10月30日付の「赤旗」で鼻持ちならなかったことは、すでに予想していたことではあったが、「共産党の主張が基本的に認められる結果となり、勝利をおさめました」などと書いていることである。馬鹿も休み休みに言え、というところだろう。私は29日のコラムであえて書かなかったが、当方の弁護団も、私自身も、「実質勝訴したのは私たちである」と考えている。ただそれを書いてしまうほどには、デリカシーが欠けていなかったということだ。仮にも「和解」という形で終結させた以上、「勝利をおさめました」などの言葉で相手を引きずり降ろすような真似をするつもりはなかった。
 私は被告本人として、この裁判の8回に及ぶすべての和解交渉(弁論準備手続)に出席してきたが、交渉の中で高部眞規子裁判長(東京地裁・民事47部)もはっきり我々に言明していた。それは、原告・共産党側にとってこの裁判でいちばん大事なことは「名誉毀損」部分であるという認識である。
 「しんぶん赤旗」は、「帰国事業のウソに反論」などと見出しをつけて過去に報じたこともあったが、結局、この本の“真実性”はなんら冒されることはなかった。“真実性”は「揺るぎなかった」わけである。
 その証拠に、和解条項(第1項)にある「表現の一部に誤解を招くおそれのある表現があった」の記述は、まさに「表現の一部」に「誤解をまねくおそれ」があったということであり、それはあくまで「おそれ」にすぎない。「誤解をまねいた」とこちらは認めたわけでもないし、まして「事実に誤りがあった」などというものではまったくない。要するに共産党は、自ら訴えた名誉毀損部分において“完敗”したのである。
 本件裁判のもっとも肝要の部分で、共産党は実質的になんらの「成果」も得ることができなかったのだから、「勝利をおさめました」などと書いているのは、この党のいつもの姿、“ハレンチ行為”そのものである。
 ただし、著作権侵害の部分については、私どもが過去の赤旗記事などを「資料集」として巻末に掲載したことは事実であり、了解をとっていたわけではなかったので、譲歩したのである。さらに著作権侵害の「おそれ」がある以上、出版を止めるという内容の和解である。
 10月30日付の「赤旗」は、最初に「謀略本の販売停止」の見出しを掲げているが、こんなものは当方にとってなんの痛手でもない。著作権部分について問題のおそれがあったから出版をやめたにすぎず、本文のみを印刷して出版、あるいはインターネット上に流すことはいま現在も「自由」なのである。つまり、繰り返すが、本書の“真実性”にはなんら問題なかったことを、原告の日本共産党自身が「認めた」に等しい和解内容なのである。
 まして、半世紀近く前の「赤旗社説」などを掲載したことが著作権侵害にあたるといって共産党は訴えてきたわけだが、公党の主張であるところの「社説」を、こちらはわざわざ「宣伝」してあげたのである。感謝されこそすれ、その「宣伝」が間違っているというのは自己矛盾そのものである。過去の主張が現実にそぐわなくなっている「証明」を自らさらしているも同然であり、むしろ、そんな政党に存続の価値があるのかという根本矛盾に突き当たる。
 29日のコラムではあえて触れなかったが、本件で被告になったJR東日本とジェイアール東日本企画についても、10月30日付の「赤旗」は、JR側が「事実上、中吊り広告の掲出が不適切であったことを認めるものとなっている」などと書いている。これも、この党ならではの“ハレンチ行為”である。
 29日の和解成立の場にいた私がノートに書きとめているのだから、ここにはっきり書き残しておくが、JR側の代理人(女性弁護士)が高部裁判長から「今後、広告掲載基準を遵守されますか」と聞かれ、こう答えている。
 「従来とってきたところでありますし、当然であると考えています」
 つまり、JR側は「従来どおりに守っていく」と答えたにすぎない。それを、「赤旗」は鬼の首でもとったかのように「JRも非を認めた」との“宣伝”に励んでいるのである。まさしく、「赤旗」ならぬ「ウソ旗」(共産党関係者)の面目躍如といったところだ。
 JR側は、和解には参加しなかったが、未来書房らの和解成立によっていったん「分離」され、共産党とJR側の訴訟だけが残る形になった。だが、その場で、共産党が訴訟を「取り下げ」、JR側がそれに「同意した」から本件のすべての争いが終結したわけである。共産党はここでも自ら訴えを「取り下げた」のである。それでいながら、この肝心の事実を一行も報じていない。同じ被告の側にいたJR側の名誉のためにも、このことをはっきりと記しておきたい。
 一方で、10月29日の和解成立にからみ、おもしろい動きもあった。日本共産党の原告代理人の一人であり、日本共産党法規対策部の前副部長でもあった「松井繁明」弁護士が、われわれの弁護団の一人に向かってこう言ってきたのだ。
 「ほかのごちゃごちゃしている裁判もみんな和解しようよ」
 松井弁護士は、古くは“依頼主を恐喝して資格を失った元弁護士”山崎正友が深く裁判にも関与した宮本宅盗聴事件の宮本側代理人をつとめたほか、現在も、私の乙骨・フォーラム裁判の乙骨側代理人をつとめ、私の知る限りでも、ぴっかりこ裁判(創価大学のOBらが大学を訴えた裁判)、日蓮正宗檀徒の違法ビラ訴訟、NTTドコモ事件など、ことごとく反創価学会側の代理人として活躍中の“共産系弁護士”である。その代理人自身が、非公式の場ながら、「みんな和解しようよ」と弱音を吐いてきたのである。
 いずれにせよ、日本共産党の北朝鮮問題にからむ裁判は、本件以外に、共産党がフジテレビを訴えた裁判がある(本サイト「北朝鮮・脱北者関連」参照)。2005年1月17日に東京地裁で一審判決が出るが、共産党側の敗色濃厚と見られている。それだけに、本件裁判の和解が決裂し、判決をもらうとなれば、同時期に2件の判決を受ける可能性もあった。
 最後に、本件訴訟にからみ、共産党機関紙「しんぶん赤旗」は私が稲山三夫というペンネームを使って本書を執筆したことをとらえ、「正体隠し」「偽名」「謀略」などと口汚く罵ってきたが、日本共産党の最高指導者「不破哲三」自身が、その≪偽名≫を名乗っている。本名は「上田建二郎」である。私は共産党員やシンパの人々になんの恨みも持たない(むしろ親しく付き合っている人もいる)が、この党の根本的体質、さらに党指導部、赤旗社会部の行動には“呆れる点”が多々ある。

赤旗記事
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-10-30/04_01.html

日本共産党・法規対策部長の「空疎な弁解」
 「公党」である日本共産党がいまだに私のことを中傷していると聞いて、月刊誌『前衛』(2005年1月号)を手にとってみた。なるほど、ひどい内容である。
 日本共産党の法規対策部長をなのる「柳沢明夫」なる人物が、同党の体質らしい“空疎な弁解”をおこなっている。
 何度も繰り返しているが、私がペンネームで執筆した『拉致被害者と日本人妻を返せ〜北朝鮮問題と日本共産党の罪』は、事実しか記していない、政党批判の書である。これに対し、「柳沢」なる人物は、同書が「初めから終わりまで北朝鮮問題を利用して日本共産党にいわれのない攻撃をくわえ、党を陥れることを目的として出版されたもの」などと決めつけている。はたして、この人物の頭は正気なのか。
 「柳沢」のいう“いわれのない攻撃”なる中身を、共産党の「訴状」に即して列記してみよう。訴状で具体的に示されているのは、次の記述のみである。

 「北朝鮮帰国運動で『地上の楽園』のデマを演出した日本共産党!」(帯)
 「日本共産党が拉致調査を妨害した『本当の理由』とは!」(帯)
 「拉致調査を“妨害”しつづけた日本共産党」(帯)
 「拉致問題に最後まで“消極的”だった政党が日本共産党であり、その共産党が『拉致疑惑の存在を認めさせ、道理ある解決方法を提案した』などと声高に主張しているのは、この党ならではのハレンチ行為」(本文2ページ)
 「180度、自分の立場を≪豹変≫させている」「まさに、詐欺行為としかいいようがない」(49ページ)
 「この党は、被害者やその家族の心情など、いっぺんたりともくんだことがない」(49〜50ページ)
 「(北朝鮮帰国事業で)共産党がとってきた“消極的態度”は、はっきりいえば、不作為の罪としての“殺人加担行為”」(82ページ)

 その上で、共産党は、「拉致問題、帰国事業などにかかわって犯罪者の党であるかのように思わせる事実を摘示し、日本共産党の名誉を侵害した」などと結論づけて訴えてきたのである。
 一連の和解交渉で、上記の記述中、裁判官らが具体的に論及したのは、最後の“殺人加担行為”なる言葉のみである。そもそも、この部分を本書ではどう描いていたか。正確に示す意味で、前後を含めて紹介する。
 
 「ただ、多くの帰国者やその家族が北朝鮮の地で路頭に迷い、いまや中朝国境でも助けを求めている現実がある。その間、共産党がとってきた“消極的態度”は、はっきりいえば、不作為の罪としての“殺人加担行為”といってもよいのではないだろうか。実際は、日本共産党は、『人道目的』で帰国事業を続けたのではなく、朝鮮労働党との関係、また国際共産主義運動を守るために続けたといってよい。つまり、人のいのちよりも、自らの主義・主張を優先してきたのだ」

 この記述を、天下の公党が「犯罪者の党であるかのように思わせた」といって、名誉毀損で訴えてきたのである。事実に基づく論評を、都合が悪いと訴えてきたのである。自らの「過ち」をけっして認めることのない、日本共産党らしい行動といえよう。
 当時、煽(あお)るだけ煽って帰国事業を推進してきた日本共産党が、その後帰国者の調査や帰還を求める運動をなんら起こさないばかりか、善意の党員がそのような活動を始めるや逆に妨害するなどし、そうした消極的態度によって、結果的に、北朝鮮にわたった10万人近い人々がまさに生死におよぶ苦難をよぎなくされているのである。このことは、まぎれもない事実なのであって、「柳沢」のように≪虚構≫の上に自らの主張をおく態度は、政党人として許されるものではない。はたしてこれが、公党の責任ある態度といえようか。
 まさに、自らの顔にドロを塗るような論文としかいいようがあるまい。
 そもそも、日本共産党は訴えを「取り下げた」のである。刑事告訴も同時に「取り下げ」ている。ほんとうに同書の指摘が“いわれなき批判”であり、そのことを裁判所が認めるのであれば、原告である共産党が、訴えを取り下げるはずがない。裁判というものは本来、訴えた側にイニシアチブ(主導権)があるのであって、勝利する裁判であれば、ふつうは和解になど応じないものである。
 だが、「柳沢」はこの和解で、本書が出版されなくなったことをとらえ、「不法な勢力にたいする政治的勝利」などと書き連ねている。
 そもそも本書の著者である小生にとって、最大の関心事は、この書物に記したことがウソであるかどうかの一点にすぎない。その意味では、共産党はなんらの実質的成果も得ることができなかったばかりか、逆に、「真実の書」であることが証明される結果となってしまったのである。
 加えて、版元がどのような広告を打とうが、それは著者の問題ではない。わが国は資本主義社会であって、日本共産党が「理想の社会」として目指すような共産主義社会ではないのだ。需要があれば、そこに供給が生じる。宣伝も出版社の正当な営業活動にすぎない。
 共産党の法規対策部長たるものが、「歴史の恥」として永久に残るような論文を書くヒマがあるのなら、もう少し、自分たちの弁護士を「指導・監督」するのが先ではないか。いつも法廷に遅刻する某弁護士など、関係者はみな呆れ返っている。
 今回の裁判によって、私自身も多くの収穫を得た。その一つは、共産党が帰国事業にいかに親密に関わったかを示す資料などがさらに発掘できたことである。こうした新資料などをもとに、いずれ機会があれば、“第二弾”を出版する予定である。訴訟を起こしたことが成功したかどうかの「法規対策部長」としての判断は、その後に譲ったほうが賢明であろう。
 ことに、北朝鮮問題で歴史的にも大きな責任をもつ「不破哲三」こと「上田建二郎」議長のクビが飛ぶような事態に発展すれば、法対部長の責任問題などでは済まなくなるはずだ。

(参考)

◎「真実」であるがゆえに、日本共産党によって“発禁処分”を求められた書!

『拉致被害者と日本人妻を返せ〜北朝鮮問題と日本共産党の罪』目次

●第1章 拉致調査を“妨害”しつづけた日本共産党
●第2章 すべて自分の“手柄”にする日本共産党
第3章 北朝鮮帰国運動の大罪
第4章 「兄弟党」の契り
第5章 善意の批判者をパージして成り立つ日本共産党
第6章 証言 「帰国事業は共産主義の“幻想”がもたらした悲劇だった」
2002年12月24日 未来書房刊



 
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